何年で資産が倍になるかを計算する「72の法則」は利率8%の世界の話!裏側の数学を考える

お金の話

こういう数字いじり大好きなんです( ˘ω˘)

72の法則とは

利率\(r\)%で元本\(x\)円を2倍にするのに何年かかるのか簡単に計算できる近似式です。
72を利率\(r\)で割ることで求めます。

(例)利率\(5\)%だったら\(72 / 5 = 14.4 \)年かかる

厳密に計算してみる

利率\(r\)%で元本\(x\)円を\(n\)年運用した場合、資産は\(x(1+\frac{r}{100})^n\)円になります。よって元本が2倍になるときを考えると、以下の式が成り立ちます。

$$2x = x(1+\frac{r}{100})^n$$

これを\(n\)について解いて以下を得ます。ここで \(\log\)は自然対数です。

$$ n = \frac{ \log 2 }{ \log(1+\frac{r}{100}) } $$

これが厳密な年数です。

72の法則は利率8%でベストな近似をしてくれる

厳密な計算によって算出された年数と、72の法則で算出された年数を比較してみます

r(利率%)年数(厳密)年数(72の法則)
169.6607168972
235.0027887836
323.4497722524
417.6729876918
514.2066990814.4
611.8956610512
710.2447683510.28571429
89.0064683429
98.0432317278
107.2725408977.2

これを見ると、以下のことがわかります。

  • 72の法則で算出された年数は、利率が8%ぐらいまでは実際の年数より長めに出る
  • 72の法則で算出された年数は、利率が8%を超えると実際の年数より短めに出る

つまり72の法則は利率が8%のときにベストな近似をしてくれます。これを知っていると、利率3%の投資を考えているときは「実際は24年よりは短いのか~」とか、逆に利率10%の投資について考えるときは「実際は7.2年よりは長いのか」という感覚を持つことができるため、より解像度高く計算することができます٩( ‘ω’ )و

数学的に近似してみる

さて、ここからは数学的な背景の話です。72の法則というのは、つまりは\(n= \frac{72}{r}\)という反比例の式です。これが\(n = \frac{ \log 2 }{ \log(1+\frac{r}{100}) }\)と近似できるというのはあまりにも突然すぎる感じがしませんか?

実は\(x\)が0に近い場合、\(\log(1+x)\)は\(x\)に近似することができます。(この背景はテイラー展開というものがあります)

これを用いると、\(r\)が0に近いとき、\(\log(1+\frac{r}{100})\)は\(\frac{r}{100}\)に近似することができるため、厳密な年数の式は以下のようになります。

$$ n = \frac{ 100\log 2 }{ r } $$

無事反比例の形になりましたね!さらに \(\log 2 = 0.6931… \)なので、ざっくり\(0.69\)とすると数学近似版「72の法則」ができました

$$ n = \frac{ 69 }{ r } $$

「69の法則」じゃないか!と思った方もいるかも知れませんが、これは\(r\)が0に近いときの話です。実際に計算してみると、利率が上がるにつれて近似の精度が悪化しています。

r(利率%)年数(厳密)年数(69の法則)
169.6607168969
235.0027887834.5
323.4497722523
417.6729876917.25
514.2066990813.8
611.8956610511.5
710.244768359.857142857
89.0064683428.625
98.0432317277.666666667
107.2725408976.9

実際の年数より短く出てしまうため、この近似値を信用してしまうと実際運用を行ったときに想定よりも長く運用する必要が出てきます。これは都合が悪いということで72に補正されているのですね。

XXの法則を作ってみる

72の法則は8%の利率でちょうどよくなりました。

同じように他の数字でXXの法則を作れば、どの利率のときにどの数字の法則を使えば良いのかわかりそうです。

r(利率%)年数(厳密)年数(69の法則)年数(70の法則)年数(71の法則)年数(72の法則)
169.6607168969707172
235.0027887834.53535.536
323.449772252323.3333333323.6666666724
417.6729876917.2517.517.7518
514.2066990813.81414.214.4
611.8956610511.511.6666666711.8333333312
710.244768359.8571428571010.1428571410.28571429
89.0064683428.6258.758.8759
98.0432317277.6666666677.7777777787.8888888898
107.2725408976.977.17.2

これをみると以下の法則が使えるかもしれませんね( ˘ω˘)

  • 利率2%程度:70の法則
  • 利率5%程度:71の法則
  • 利率8%程度:72の法則

72の法則は優秀

8%の利率の世界とはいえ、72の法則は優秀だなと思いました。

一番の理由は約数が多くて暗算がしやすいところですね。71は素数なのでそうはいかないです。

何気ない法則も裏側を計算して確かめてみることでより理解が深まったような気がしました。

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